大阪地方裁判所 平成11年(ワ)7169号 判決 2000年6月23日
第七一六九号事件原告
株式会社トミヤ商店
被告
柳原琢
第一二九八九号事件原告
北村富章
被告
柳原琢
主文
一 平成一一年(ワ)第七一六九号事件被告は、同事件原告に対し、金一三万五五〇〇円及びこれに対する平成一一年四月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 平成一一年(ワ)第一二九八九号事件被告は、同事件原告に対し、金三〇万円及びこれに対する平成一一年四月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
四 訴訟費用は、これを一〇分し、その八を平成一一年(ワ)第七一六九号事件原告及び平成一一年(ワ)第一二九八九号事件原告の負担とし、その二を各事件被告の負担とする。
五 この判決は、第一項及び第二項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
一 平成一一年(ワ)第七一六九号事件
平成一一年(ワ)第七一六九号事件被告は、同事件原告に対し、金二〇〇万八六五〇円及び内金一五五万九二五〇円に対する平成一一年五月二五日から、内金四四万九四〇〇円に対する平成一一年四月二五日からそれぞれ支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 平成一一年(ワ)第一二九八九号事件
平成一一年(ワ)第一二九八九号事件被告は、同事件原告に対し、金七七万四九四五円及び内金五八万六三七五円に対する平成一一年四月二五日から、内金九万四二八五円に対する平成一一年五月二六日から、内金九万四二八五円に対する平成一一年六月二六日からそれぞれ支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
一 訴訟の対象
民法七〇九条(交通事故)
二 争いのない事実及び証拠上明らかに認められる事実
(一) 交通事故の発生(甲一、三)
<1> 平成一一年四月二五日(日曜日)午後四時二五分ころ(晴れ)
<2> 大阪府池田市神田二丁目中国縦貫自動車道中国上り一一・二KP
<3> 各事件被告(以下、単に被告という。)は、普通乗用自動車(神戸七七は一一四八)(以下、被告車両という。)を運転中
<4> 平成一一年(ワ)第一二九八九号事件原告(昭和四一年一一月一日生まれ、当時三二歳)(以下、原告北村という。)は、普通乗用自動車(大阪三四や一一〇一、メルセデスベンツCL六〇〇)(以下、原告車両という。)を運転中
<5> 平成一一年(ワ)第七一六九号事件原告(以下、原告会社という。)は、原告車両を所有
<6> 被告車両が原告車両に追突した。
(二) 責任(弁論の全趣旨)
被告は、前をよく見ないで運転して、原告車両に追突した過失がある。したがって、被告は、民法七〇九条に基づき、損害賠償義務を負う。
三 原告会社の主張(平成一一年(ワ)第七一六九号事件)
(一) 修理費 四四万九四〇〇円
原告車両は、リアバンパー、ボンネットなどに損傷を受けその修理費は、四四万九四〇〇円である。
(二) 営業損害 一五五万九二五〇円
原告会社は、レンタル業を営み、原告車両をレンタカーとして使用していた。ところが、原告車両を修理していた間の平成一一年五月一〇日から同月二四日までの一五日間、レンタルの申込みがあったにもかかわらず、レンタルすることができなかった。原告車両の一日あたりのレンタル料は一〇万三九五〇円である。したがって、原告会社は、一五日分の合計一五五万九二五〇円の損害を被った。
四 原告北村の主張(平成一一年(ワ)第一二九八九号事件)
(一) 治療費 八万二四二五円
原告北村は、本件事故により、頸椎捻挫などの傷害を負い、リハビリのため、治療費として八万二四二五円を要した。
(二) 慰謝料 四〇万円
通院慰謝科は四〇万円が相当である。
(三) 休業損害 一八万八五七〇円
原告北村は通院のため四日にわたって一部休業し、平成一一年五月分が九万四二八五円、同六月分が九万四二八五円の合計一八万八五七〇円の減給をされた。
(四) レンタカー料金 一〇万三九五〇円
原告北村は、本件事故当日、レンタカー(原告車両のこと)を借り、妻とホテルに行って食事をする予定であったが、事故のため、食事ができなくなった。したがって、レンタカー料金一〇万三九五〇円の損害を被った。
五 被告の主張(各事件)
(一) 原告会社の請求について
本件事故は軽微な追突事故であり、その損傷はわずかで、修理費については、一三万五五〇〇円で修理業者と協定済みである。
営業損害については、原告会社がレンタル業をしていたことも、原告車両がレンタカーとして使用されていたことも否認する。したがって、損害は認められない。
(二) 原告北村の請求について
損害は争う。
治療費は相当性がない。慰謝料は高額すぎる。休業損害は発生していない。レンタカー料金は否認する。
六 争点
原告ら主張の損害の有無
第三争点に対する判断
一 原告車両の修理費について
原告会社は、原告車両の修理費が四四万九四〇〇円である旨の主張をし、原告車両の写真(甲二)、修理業者の報告書(甲一六)、二回目の修理見積書(甲二二)、修理業者の報告書(甲二六)を提出する。
しかし、これらの写真や報告書を険討しても、原告車両がボンネット部分に損傷を受けたとか、リアバンパーの取り替えが必要であったとまでは認められず、これらの修理を前提とする原告会社主張の修理費が必要であったとは認めがたい。
他方、これらの証拠のほか、一回目の修理見積書(甲一七)、写真(乙一)、保険会社の担当者のメモ(乙六)、保険会社の担当者の証言(登山源治)などを総合的に検討すると、次の事実が認められる。つまり、本件事故は、比較的軽微な追突事故であった。本件事故後の平成一一年五月七日、原告車両が修理業者に搬入され、そこで、修理業者と保険会社の担当者が立ち会い、修理する部分と方法を確認した。そして、五月一三日、修理金額を一三万五五〇〇円と定め、仮協定をした。ところが、その後、修理業者が保険会社に対し、再修理が必要であり、被害者の希望でリアバンパーを交換したと連絡をした。しかし、保険会社は、再修理の内容を確認していないし、これを承諾してもいない。
これらの事実によれば、仮協定された一三万五五〇〇円の限度で修理が必要であったと認められるが、それを超える部分については、どのような損傷を受け、どのような修理が必要であったかがいまだ明らかではないといわざるを得ない。
したがって、原告車両の修理費は一三万五五〇〇円と認められる。
二 原告車両の営業損害について
原告会社は、レンタル業を営み、原告車両をレンタカーとして使用していたが、原告車両を修理していた間、レンタルの申込みがあったにもかかわらず、レンタルすることができなかった旨の主張をし、原告会社から原告北村に宛てたレンタカー料金の領収書(甲五)、パンフレット(甲六)、レンタル申込書(甲七、一四、一八)、営業所の写真(甲二一)、レンタル利用者の報告書(甲二三)などを提出する。
しかし、これらの文書を検討すると、特定の者が原告会社所有の原告車両を利用したという内容にすぎず、到底、原告会社がレンタル業を営んでいたと認めるに足りない。しかも、原告会社は原告車両のほか、高級外国車を所有していた(甲二七)にもかかわらず、どうして原告車両に替えて、その高級外国車をレンタルしなかったのかについての合理的な説明もない。他方、本来、レンタル業を営んでいたのであれば、だれが、いつ、どの車両を、どのように利用して、いくら料金を支払い、会社の収支がどうなっているのかなどを明らかにする文書があるはずであるが、これらの提出はない。原告会社提出の文書は、いわば私文書であるが、営業を裏付ける客観的な文書の提出もない。
かえって、原告会社は原告車両を所有しているが、車検証によれば、使用者は原告北村とされ(甲三)、原告北村は原告会社の代表取締役であり、原告会社は同族会社である(甲四)から、原告車両をレンタル業に使用していたとは疑わしい。
いずれにしても、原告車両をレンタカーとして使用していた旨の主張は認められない。
三 原告の治療費について
原告北村は、本件事故により、頸椎捻挫などの傷害を負い、リハビリのため、治療費として八万二四二五円を要した旨の主張をし、診断書(甲一二の三)、スイミングスクールの領収書(甲三六、三七)を提出する。
しかし、治療として水泳を要する旨の医師の指示も認められないし、医学的な相当性を裏付ける資料も認められない。
したがって、スイミングスクール代が本件事故と相当因果関係がある損害と認めることはできない。
四 原告北村の通院慰謝料について
原告北村は、本件事故後、市立吹田市民病院で診察を受け、頸椎捻挫と診断され、その後、約三か月の間に六日程度通院して治療を受けたことが認められる。(甲一二の三、弁論の全趣旨)
さらに、後記認定のとおり、休業損害が認められないことを考慮し、慰謝料は、三〇万円が相当である。
五 原告北村の休業損害について
原告北村は通院のため四日にわたって一部休業したと主張し、陳述書(甲二四)、出勤簿(甲二五)、賃金台帳(甲三〇)、証明書(甲三三)などを提出する。
確かに、前記のとおり、原告北村が本件事故後診察を受けるため、数日にわたって通院したことが認められる。
しかし、そうであったとしても、原告北村が原告会社の代表取締役であり、しかも原告会社が同族会社であることを考えると、また、原告北村の具体的な仕事の内容が明らかではないことから、通院によって原告北村に収入の減少があったとは認めがたい。かえって、傷害の内容、治療の経過、職場での地位や代表取締役としての仕事の内容を考えると、減収は生じていないのではないかと考えるのが自然である。なお、原告会社が原告北村の給料を減給した旨の休業損害証明を提出するが、これは実質的には原告北村自身が作成した証明書といえるから、これだけでは減収があったことの裏付けとしては足りない。
もっとも、少なくとも、通院によって業務に支障が生じ、原告北村がその努力によってこれをカバーしたとは認められるから、その事情は前記の慰謝料として考慮する。
六 原告北村のレンタカー料金について
原告北村は、本件事故当日、レンタカー(原告車両のこと)を借りていたが、予定の行動をとることができず、レンタカー料金の損害を被った旨の主張をし、領収書(甲五)を提出する。
しかし、前記認定のとおり、原告会社が原告車両をレンタルしていたとは認められないから、この主張も認められない。
第四結論
一 したがって、被告は、原告会社に対し、修理費一三万五五〇〇円を支払うべきである。
二 また、被告は、原告北村に対し、慰謝料三〇万円を支払うべきである。
三 そのほかの請求は、いずれも認められない。
(裁判官 齋藤清文)